さてここで再び早春の花、カタクリの話にもどりましょう。

春のはかない命と呼ばれているカタクリも実際には何年も生き続けます。

アリによって運ばれた種子からは次の年の春にもやしのような細長い葉が伸びてきます。

そして光合成によって栄養分を貯え小さな球根をつくります。

次の年に出てくる葉は1年目のものより少し大きく先のほうが広がって葉っぱらしくなっています。

こんなふうにしばらくは毎年葉を1枚だけ出してだんだん球根を大きくし成長していきます。

7,8年たって、球根に十分栄養が貯えられるとはじめて花芽をつけます。

そして細長い2枚の葉の間からつぼみを伸ばしややうつむきかげんの美しい薄紫色の花を咲かせるのです。

その後、何年か花を咲かせ、毎年2、30個の種子をつくり続けたあと、15年ぐらいでその一生を終えるようです。

毎年、少しづつ着実に成長していく、このような姿を見ているとカタクリはけっしてはかない命ではなく、力強くしたたかに生きている植物のように思えてきます。

もののふの八十乙女らが、汲みまがう寺井の上のかたかごの花

万葉集にみられるこの歌は 大伴家持が越中の国、つまり現在の富山県に国司として赴いたときに詠んだものです。

雪解けの頃でしょうか、娘たちが水くみをしていて、その近くにたくさんのカタクリの花が咲いているという北国の春の日の情景が浮かんできます。

カタクリは、その頃は家のまわりで普通に見られる、ごく身近な植物だったのでしょう。

毎年春になると、これらの妖精たちが姿を見せてくれる雑木林などの自然がいつまでも残っていてほしいものです。

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−植物の生存戦略−

春の妖精たち

種子から発芽したカタクリ

2年目の芽生え

しばらくは葉だけを出す

少しづつ大きくなる球根